
昨今、各RFタグメーカーから「センサー機能付きRFタグ」商品が発売されてきております。今回はこのセンサー付きRFID技術についてご紹介します。
センサー付きRFIDとは?
技術の進化に伴い、RFタグのICチップから各種センサーを接続可能にしたICが開発・商品化されました。タグメーカーはこのチップを購入し、温湿度センサーやジャイロセンサーなどを搭載した様々なRFタグを商品として市場にリリースしてきております。センサー付きRFタグにはある閾値を超えるとフラグが立つような機能もあります。温度が規定の温度を超えるとアラートとして検知するようなこともできます。
センサー付きRFタグのメリットと利用シーン
RFタグにセンサーをつけるメリットとしては、以下があります。
1.個品のIDと同時に状態を取得することができる。
2.RFIDの電波でセンサーの状態を通信できるため、Wi-fiや電源などが不要になる。
センサー付きRFタグの仕様は、UHF帯RFIDのプロトコル規格であるISO/IEC 18000-63にてオプション機能として規格化されていますので汎用のリーダライタでセンサーの値を読み取ることができます。
通常のデータロガーのような製品では一般的に冷蔵庫などの庫内温度を記録することはできますが、その中の個品のピンポイントな温度などを記録することができませんでした。
昨今、北米を中心に期待が高まっているCold Chain(低温物流)の標準化のためのキーテクノロジーの1つとしてみなされています。
例えば、新型コロナウイルスのワクチンなどでは、超低温での保管が義務付けられており、低温の冷凍庫の需要が高まったことは記憶されている方も多いと思います。冷凍庫の温度管理も確実に実施していましたが、ワクチンそのものの温度が規定値よりも上がらなかったことは担保できていなかったと思います。温度センサー付きRFタグをワクチン1つ1つに貼付することができればワクチンの温度が適正であったことを担保できることになるでしょう。
また液体検知のセンサーを使用したRFタグを使用することで、工場などにおける油漏れ、水漏れを確実かつ簡単に検知することができるようになります。液体が通っている配管にRFタグを貼付しておけば、ハンディリーダーなどを持って1周回るだけで設備の不具合を見つけることができるようになります。これを固定式のセンサーで実現しようとすると、電源と通信を用意する必要がありますが、センサー機能付きのRFタグを使えば面倒な工事が不要になります。
さらにリーダライタをAGVやAMRに搭載することができれば配管チェックの無人化を実現できます。
センサー付きRFIDタグの種類
センサー付きのRFタグにはセンサーの種類とは別に3つの種類があります。
Full Function Sensor(フルファンクションセンサー)
このセンサーはユーザがセンサーの設定や計測タイミング、アラートの閾値などを自由にプログラミングできます。10分おきに温度を計測し、RFタグのメモリに記録しておくということも可能です。
一方でセンサーを動作させるための電力が別途必要になります。電力の供給はバッテリー付きのRFタグにするか、RFIDの電波を当て続けることで確保します。
Simple Sensor(シンプルセンサー)
Full Function Sensorと似た動作をしますが、センサーの設定等は工場出荷時にプログラミングされ、変更することができないものです。
データロガーのように使用する場合には適しているといえます。
Snapshot Sensor(スナップショットセンサー)
RFIDの読み取りコマンドに対して1回だけセンサーで計測し、コマンド受信時のセンサーの値を返すものです。
センサーはRFIDの電波を電力として使用するため、バッテリーが不要になります。
さらに、現在、日本発で開発中の技術としてStreaming Sensor(ストリーミングセンサー)という技術があります。これは読み取りコマンドに対してセンサーの値をストリーミングしてくる(データを受信しながら同時に再生を行う)技術で、応答が高速であることもあり、様々な用途での利用が期待されております。
この技術はISO/IEC JTC 1/SC 31/WG 4にて日本提案により国際標準を開発中です。
具体的なセンサー付きRFID商品の例
Avery Dennison社製 パッシブRFIDセンサインレイと温度ロガー
工業、サプライチェーン、資産管理、ヘルスケアなどの分野で、費用対効果に優れた信頼性の高い環境モニタリングソリューションを提供しています。
湿度や温度を検知するRFIDインレイ
RAIN RFID (UHF)インレイは、アンテナの種類やセンサーICの数に様々な選択肢を持ち、幅広い用途で湿度や温度条件を正確に測定することが可能です。
バッテリーレスで、コスト効率が高く、実装が容易で、繊維、金属部品、建築材料など、さまざまな表面素材に対応しています。 製品ラインアップは、NFCとUHF周波数帯用の2つの温度ロギング製品にまとめられています。
【代表的なアプリケーション】
①自動車製造時の漏水検知
②建築や建材の湿度測定
③液体商品のパッケージングにおける漏出検知
④食品、温度に敏感な医薬品、化学品のコールドチェーン管理
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