製造業においては、工場の管理運営をいかに効率化するかについて、常に試行錯誤しているのではないでしょうか。特にその管理運営において重要なのが、あらゆる状況を見える化することにあります。データ活用が進む昨今、あらゆるポイントでのデータ取得が可能になりましたが、バラバラに存在しているのでは有効活用しにくくなります。
今回は、工場の見える化を推進するために、ディスプレイに表示することの目的とメリット、実際に活用した事例をご紹介します。
工場の見える化とは、生産現場や生産体制・工場運営に活用するデータを可視化することを指します。見える化の主な対象としては、在庫や原材料などの物の数、製造ラインにおける工程や人の動き、計測機や設備の稼働状況など、製造現場におけるあらゆるものが挙げられます。工程表などの管理に関わる情報を電子化して工場内で共有することも含む場合があります。
工場内にある設備のログから直接データを取得したり、センサーやカメラを配置し、IoT(Internet of Things)機器を通じてデータを収集したりしてデータを得た後で分析し、分析結果をシステムの画面などに表示することで行います。
近年、工場の見える化と共に、「見せる化」の取り組みも推進されています。それぞれの違いを確認しておきましょう。
見える化:IoT(Internet of Things)機器やシステムなどを活用し、工場内情報を収集して分析した結果を何らかの方法で表示させて全体像をつかめるよう、「見える」ようにします。工場の管理者や経営層などの立場の人々が、管理や改善を目的に工場の様子を「見える」ようにする意味合いがあります。
見せる化:工場のあらゆる情報を掲示して情報を工場員に「見せる」ことを指します。管理者が工場員に対して「見せる」という意味合いがあります。つまり情報を自ら取りに行かなくとも、自然と目に飛び込んでくる、効果的な情報共有の手段を指しています。
見える化と見せる化の大きな違いは、「目的」と「見る人」の違いにあるといえます。見える化は管理を目的としますが、見せる化は情報共有や認知、浸透を目的とします。
見える化における見る人は主に「管理者」であり、見せる化における見る人は主に「工場にいる人」になるでしょう。
工場の見える化は、主に次の目的で行います。
工場内のあらゆる設備や工場員の動きなどを見える化することは、課題の把握ができることから問題解決に寄与します。例えば、生産効率が落ちているため、すぐにでも上げたいという経営課題があったとすれば、工場内で何がボトルネックになっているのかを見える化により明確にしやすくなり、解決策を講じやすくなります。
近年は、製造業における工場の人手不足が深刻化しており、少ない人員で効率よく稼働する必要があります。そのような状況の中、生産ラインや生産機器などの状況を可視化し、課題の発見および改善を進めることにより、業務効率化につながります。
何か工場内で問題が生じたときにも見える化の仕組みが整っていれば、早期のリスクを発見し、迅速に手立てを打つことが可能です。例えば機械の老朽化による不具合が徐々に生じることがありますが、センサーによる正確な稼働データの取得と見える化により、早期発見が可能になります。迅速に機械の修理や交換を実施でき、大きな事故や損失を回避できます。
工場にディスプレイを設置して、情報を見える化することで管理者同士のデータ共有が可能になります。ディスプレイを使うメリットは数多くあるため、次の項目でご紹介します。
工場の見える化を進めると、生産ラインを客観的に見通すことができるため、属人化している工程があれば、見つけ出すことも可能です。特定の工場員が稼働している日と休みの日を比較した際に、生産品質に大きな差が出てしまうリスクがあります。見える化により属人化に対する改善策を施すことが可能です。
工場の見える化を、ディスプレイを用いて行うことのメリットをご紹介します。
ディスプレイに生産状況を映し出すことで、管理者にとって生産状況が一目で分かり、その情報を通じて一元的な管理が可能になります。また、その場で確認できることから、現場の工場員への情報共有も容易になります。
大型ディスプレイで工場内の見える化を進めることで、よりわかりやすく可視化することができるため、状況確認がしやすくなり、管理効率も向上するでしょう。また、データ履歴の確認ができるのもメリットです。
ディスプレイに、工場内の生産情報のほか、作業工程表や指示書なども合わせて表示することで、急な変更事項があった際も、リアルタイムな情報更新および掲示ができます。その結果、作業の遅延やトラブルなどの発生を回避します。
ディスプレイをWEB会議システムとつなげることで、遠隔とのミーティングなども可能です。同じ工場内の状況を可視化したデータを見ながら話し合うことで、より管理が効率化するでしょう。
工場を見える化したデータを紙に出力して配布することも可能ですが、印刷コストがかかる上に、紙の書類は紛失による情報漏洩のリスクがあります。そのため、見える化はコスト削減と書類の紛失防止にも寄与します。
ディスプレイの活用は、工場の見える化だけでなく、生産現場や管理者の情報共有にも役立ちます。そこで工場の見える化と情報共有にディスプレイを活用した2つの事例をご紹介します。
ある製造業の企業は、生産現場に不可欠な工程表をインタラクティブホワイトボード(電子黒板)のディスプレイに見える化しています。
インタラクティブホワイトボード(電子黒板)は、ただのディスプレイと異なり、ホワイトボードのように手書きができるため、チーム内の打ち合わせの際に工程表を画面に映しながら、手書きで変更点などを書き込むなどして活用しています。打ち合わせの精度が向上し、生産状況をタイムリーに周知徹底できるようになったことで、現場では生産計画に対する意識も高まり、漏れやミスが軽減しました。
ある製造業の企業は、本社の営業・開発担当者と工場が離れた距離にあり、電話とメールで連絡を取り合っていましたが、情報共有の効率の低さとスピードの遅さに課題を感じていました。
そこでWEB会議システムとインタラクティブホワイトボード(電子黒板)を導入し、遠隔会議と3D-CAD図面を表示したインタラクティブホワイトボードへの相互の書き込みによるやり取りができる体制を実現しました。遠隔地の相手に指定箇所をわかりやすく伝えられるようになり、コミュニケーションの効率化とスピード化と共に、開発の効率化にもつながりました。
工場の見える化は、生産効率を高める有効な手段であり、特にディスプレイを活用した運用は情報共有の効率化にもつながります。
ディスプレイを活用する場合には、工場の見える化だけでなく、効率的な情報共有にも役立つインタラクティブホワイトボード(電子黒板)を活用するのがおすすめです。
リコーのインタラクティブホワイトボード(電子黒板)から、クラウド上のデータを確認したり、Webブラウザ経由で業務アプリケーションを確認したり、工場内データの見える化が容易に行えます。
さらに、作業指示書やCADデータなどの情報共有にも活用可能です。手書きができることから、打ち合わせ時に変更点を書き加えるなどすることも可能です。またWEB会議システムなどを接続することで画面を共有しながら遠隔会議を行うこともできます。
さらにクラウド上のホワイトボードを活用すれば、インタラクティブホワイトボード(電子黒板)以外のパソコンやタブレット端末からもブラウザで共有している画面を閲覧したり書き込みができ、情報共有の場所を問いません。
リコーのインタラクティブホワイトボード(電子黒板)は、ディスプレイ、ホワイトボード、Web会議をはじめとする遠隔地とのコラボレーションツールとしてなど、お客様のお悩みを解決する様々な活用方法があります。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。